研究内容
 本研究室では,ディジタル信号処理技術をベースとしてディジタルフィルタの設計と実現マイクロホンアレーによる音響信号処理について研究を行なっています.
 
 

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ディジタルフィルタの設計・実現
 ディジタルフィルタ(digital filter)はディジタル信号処理技術の中心的な役割を果たす信号処理システムであり,液晶テレビやディジタルカメラなどの情報家電(ディジタル家電),携帯電話をはじめとする通信機器,ディジタルオシロなどの計測機器など幅広い分野で利用されている信号処理回路です.
 フィルタという名前から想像できるように,一番の利用目的は機器に混入したノイズをとってしまおうということですが,それ以外にも,入力した情報のなかから自分が欲しいと思う情報だけを選択的に取りだそうとか,入力情報を少しだけ修正してみましょうといった目的にも利用されます.
 ディジタルというぐらいですから,フィルタをディジタル処理で作ったものがディジタルフィルタです.アナログですと,オペアンプや抵抗,コンデンサを使ってフィルタを作るわけですが,ディジタルの場合,ディジタル回路はもちろんのこと,マイクロプロセッサなどを使ってプログラムでフィルタを実現できるようになります.ディジタルフィルタの利点は何よりもこの実現や修正の簡単さですが,その反面大変なことも多くあり,本研究室ではそれらの問題について検討しています.
 ディジタルフィルタの設計は,フィルタ係数と呼ばれるパラメータの値を決めることによって行ないます.1つのフィルタのなかにフィルタ係数はたくさんありますので,値の組み合わせ方でフィルタの特性は変わってきます.その無限の組み合わせのなかから,最適なものを選びだすのがフィルタ設計であり,最適化という手法を用いて行ないます.

これまでの研究成果
・最適性を保証する設計法の開発(これ以上良い設計はできませんという限界に迫りました)
・安定なIIRフィルタの設計法の開発(IIRフィルタでは安定性の保証が問題を難しくしていますが、それを解決する手法を開発しました)
・最適な離散係数FIRフィルタの設計法の開発(設計に1ヶ月以上必要な設計問題を数時間で完了する手法を開発しました)

ディジタルフィルタ設計例(左:等リプル設計,右:最小2乗設計)
 
マイクロホンアレーによる音響信号処理
 マイクロホンアレー(microphone array)とは,マイクをたくさん並べた集音システムです.これは,せっかくマイクをたくさんもっているのでもったいぶらずに見せびらかしてしまいましょうということではなく,マイクの位置の違いを利用して,1個のマイクを使うときよりも高品質で頭の良い信号処理をしましょうという試みです.マイクロホンアレーは,テレビ会議等における高S/N受音やロボットの聴覚の実現,変わったところでは工業製品の非破壊検査などに利用されています.
 ディジタルフィルタと同様にマイクロホンアレーの実現は,複数のマイクロホンの受信音を多チャネルAD変換器でディジタル化したデータに対して,PCやDSP,またはLSIで処理することになります.ただし,一度に処理しなければならないデータの量が多いため,プログラムで処理する場合は高速な計算方法,ハードウェアで処理する場合は回路規模の増大を抑える方法を考えるのがこの研究の鍵となります.
 マイクロホン以外にもアンテナを並べたアンテナアレーなど,センサをたくさん並べて使うことをセンサアレーといい,ここ数年信号処理や計測などの分野で注目されている技術です.センサアレーに対する処理(=アレー信号処理)は,どのセンサアレーでもほとんど同じ手法を適用することができます.

これまでの研究成果
・マイクロホンアレーを用いた複数音源定位(マイクロホン数よりも多い音源の位置を受音信号のみから推定する技術を開発しました)
・ビームフォーマによる騒音環境中の目的音抽出(やかましい環境で目的とする音のみをうまいこと取りだす技術を開発しました)
・高速複数移動音源追尾の開発(移動する複数音源の位置を高速に追尾する技術を開発しました)
・最適な指向特性設計法の開発(マイクロホンアレーの空間感度特性である指向特性を最適に設計する手法を開発しました)

マイクロホンアレー実用例(左:実環境音源定位結果,右:サイドローブキャンセラの構成)
  
 
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