研究内容


マイクロホンアレー(複数のマイクロホン)の最適な指向性設計

この技術は下の図の遠隔会議システムなどのハンズフリー通信システムに応用されています。
指向性(もしくはビームフォーマー)とは方向に対するの感度特性のことです。
指向性を制御することで要求する方向にいる話者の音声を選択し受音したり、また妨害音の抑圧などが可能です。
本研究で扱う指向性ではその両方が可能であり、また要求に対し最適な設計が可能です。
このシステムにより円滑かつ快適に遠方との通信・連絡を行うことが可能です。
本研究で提案する固定型の指向性システムのモデルは、ディジタルフィルタの畳み込み演算と同様の処理として扱えることに着目し、下記のFIRディジタルフィルタの最適設計法の適用を検討しています。

遠隔会議システム 指向特性
遠隔会議システムへの応用 マイクロホンアレーの指向特性


マイクロホンアレーの指向性については、本研究室のホームページで体験することができます。
指向性体験リンク「マイクロホンアレーの指向特性を調べてみよう」


FIRフィルタの最適設計

いくつかのフィルタ設計法を紹介します。
直線位相FIRフィルタの設計法
直線位相FIRフィルタは完全直線位相特性をもち、通信、計測、画像処理など要所で重要となる回路である。
この設計は振幅特性を所望特性に近似ことで実現できる。

[Remezの交換アルゴリズムによる等リプル設計]
この手法は交番定理に基づき極値周波数を等リプルになるまで調整する手法です。高速な設計法ですが初期への依存性があるのが難点です。

[線形計画法による設計]
線形計画法は代表的な最適化モデルを解く手法の1つであり、与えられた制約を満足し、かつ目的とする関数が最小となるような解を求める手法です。
線形計画の例として販売利益の最大化などがあり、目的関数は利益、制約は手持ちの材料の数や1つの商品に必要な材料の割合などになります。
線形計画法は、複雑な設計仕様のフィルタを設計することができますが、演算負荷が大きいというのが難点です。

任意の群遅延を持つFIRフィルタ設計
直線位相FIRフィルタは遅延時間がフィルタ次数に依存するため、しかし音響系など用いられる数千次にもおよぶ高次数フィルタでは遅延時間が大きくなってしまう問題がある。
そこで、通過帯域のみに任意の群遅延(低い遅延)をもたせることで、システムの速応性の向上が実現できます。
しかし、この設計は振幅と位相の同時近似問題となるため、難しい最適化問題となり上記の手法では最適な解を求められなくなります。
複素係数FIRフィルタの設計
通常、ディジタル信号は正の周波数と負の周波数があります。
通信分野では正と負の周波数は対称であることから、一方のみを通過させてれ信号を復元すれば、通信容量の抑圧が期待できます。
これを実現するシステムとしてフィルタ係数が複素数のFIRフィルタを用いることで信号を制御することができます。
しかし、これも上記の任意の群遅延をもつフィルタと同様、難しい最適化問題となり最適な解の算出が難しくなります。
私の研究では、これらのフィルタを最適かつ高速に設計する手法について研究しています。

実係数FIRフィルタ 複素係数FIRフィルタ
実チェビシェフ近似のFIRフィルタ 複素チェビシェフ近似のFIRフィルタ